川崎宗則はマリナーズの起爆剤となるか

鹿児島の星、
福岡ソフトバンクホークス川崎宗則内野手が、海外移籍が可能なフリーエージェント(FA)権を行使して、メジャーリーグに挑戦することが1日に分かった。

 川崎はシアトル・マリナーズイチロー外野手とプレーすることを熱望しており、その他球団からのオファーは拒否する考えであると明かした。

そういう川崎に対して、イチローのマネジャーでもやったらどうか、などの声も聞かれる。
イチロー選手と同じチームだけを希望しています。マイナー契約になるかも? それでも構いません。マリナーズ以外だったら? 行きますとは言いません」
 会見でこう語ったのが、ソフトバンク川崎宗則(30)だ。
 1日、今季取得した海外FA権を行使し、MLBのマリナーズに逆オファー。会見の様子を聞かされたイチローも、「僕は幸せ者ですね」と大笑いをしながら、驚きを隠せなかったという。
 海外挑戦といえば、聞こえはいい。プロならば誰だって高いレベルを目指すのは当然。「メジャーリーグで自分がどこまで通用するのか試してみたい、そのためならマイナーからスタートしたって構わない」というのならば、話は分かる。
 だが、川崎の眼中にあるのはメジャーリーグではない。
 アマチュア時代から大のイチローマニア。06年のWBCでチームメートとして戦ったことでその思いは一層強くなり、毎年オフの自主トレも一緒に行っている。マネジメント事務所もイチローと同じ「バウ企画」だ。
 メジャーに挑戦したいのではなく、憧れのイチローと一緒にいたいだけ。30歳のいい大人にもかかわらず、中学生が「尊敬する先輩と同じ高校に行きたい」というのと同じ動機なのだ。
 メジャーでは、そんな子供じみた動機で野球をする選手はいない。1ドルでも多く稼いで良い暮らしをするため、他人を蹴落としてでもチャンスをつかもうという選手がほとんど。年俸2億4000万円を捨ててまでもイチローと一緒にやりたいという川崎は、メジャーでは笑われるだけだ。
これまでは、まずは大リーグへ行くことが大きな目標となり、移籍先のチームを単独で表明するようなことはみられなかった。川崎の表明はこれまでに無かった形だ。マリナーズはここ数年は低迷続き。川崎は入団がかない、起爆剤となりうるのか。

 マリナーズのアームストロング球団社長は、「(会見内容を)伝え聞いたときはうれしかった」としてこの表明を好意的にとらえている。またチーム編成の全権を握るズレンジックGMも「発言に対し、敬意を表したい」と語っている。イチローとともにプレーすることを望み、マリナーズへの入団を希望する川崎。その望みがかなえられるか、それは入団がかなったとしてもプレーできるかまでは簡単ではない。

 まず、メジャー契約を勝ち取れるかがそもそも疑問である。松井稼頭央岩村明憲西岡剛など、これまでに大リーグへ挑戦した内野手は日本ほどの成績を残せなかった。川崎の現在の評価が彼らを上回っているわけではないだけに、本人も構わないとは言っているもののマイナーリーグからのスタートが現実的にも大いにありうる。

 また、打撃面でも不安がある。昨シーズンは3割を超えた打率も、今シーズンの打率は2割7分。さらに川崎の本職はショートであるが、マリナーズのショートは来期の構想ではライアンで既にほぼ確定。控えからのスタート、もしくは別ポジションでのスタートとなりそうだが、セカンドでも打撃センスのあるアックリーがいる。

 川崎はサードも守れるが、打撃に不安のある選手をサードに使うようなチームは大リーグにはほぼない。守備・走塁面などで、評価できるポイントを持っているものの、それだけでは厳しい状況が待ち構えていると言わざるをえない。

 イチロー自身も昨シーズンは200本安打の記録が途絶え、あわせて打率も下げた。チーム成績も伸びない苦しい状況が続くマリナーズ起爆剤となるには、上記の状況がある中でこれまで以上の成績を大リーグで残す必要がある。